夏と秋の間で・乙
「ンじゃ、こっち来て。」



 駐輪場まで一緒に歩いて、バイクの後ろに乗せる。



 スクーターは本来一人乗用に作られているため、当然、二人乗るとなると密着状態にならないといけない。



 少し自分が興奮しているのが分かる。



 抑えろ・・・・自分。



 理性を抑えることがこんなにも大変なことだと、望巳は初めて知った気がした。



「ありがとう。」



 本屋まで山の手公園まで、バイクならばたったの5分。



 こんなに、短く充実した5分を味わったことは望巳の17年間の人生の中で一度もない。



「どういたしまして。良かったら、また乗っけてあげるよ。」



 もちろん、社交辞令などではなく本心から出た言葉。



「ありがとう。でも、いいよ。だって、万が一斉藤君と一緒にバイクに乗っているところを見られたら、彼が嫉妬するかも知れないし・・・・。」



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?





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