夏と秋の間で・乙
「そちらが、なのはの新しい彼氏?」
麻美と呼ばれた女性が、自分の方に顔を向けて不思議そうな表情をする。
「う・・・うん。斉藤望巳くん。同じクラスなんだよ。」
「そうなんだ。相変わらず手が早いねぇ~。」
「え・・・そ、そうだね。ごめん。」
ん?なんで、あやまるんだ早川さん?
確かに手が早いことは確かだと思うけど・・・。
「まぁいいけど・・・それじゃあ、どこか行こうか?私、映画見たいんだけど・・・。」
「あ、そういうと思って、最初からチェックしてあるんだ。」
そういうと、早川さんは率先して俺たち三人を案内してくれた。
結局、四人で見た映画は、今どき流行りのコテコテの恋愛映画で、アクションとコメディぐらいにしか興味のない望巳にしてみれば、どうしてこんなものを金払ってまで見なければならないんだ?・・・と思えるぐらい、つまらないものだった。
それでも、払ったお金がもったいないから、最初から最後まで見ただけ偉いと思う。
それから、四人でカフェでお茶して、麻美さんと歩くんは、帰って行った。
その間、ひたすら早川さんは笑い続けていた。
だけど、その表情がどこか寂しげだったのは、たぶん気のせいじゃないだろう。
だって・・・彼らを見送った後に、彼女の目に浮んできたのは、紛れもない涙だったから・・・。