夏と秋の間で・乙
友人
「浮気者。」
速人からそんな言葉がかけられたのは、次の日学校に登校した途端だった。
「何の話だよ?」
心当たりがないわけではないが、一応とぼけてみる。
「昨日のことだよ。誰にも見られてないとか思っていたのか?」
壁に耳アリ、障子に目アリ。
狭い街。
とは言え、いくらなんでもそこまで身近な人に見られていようとは・・・。
「お前って、俺のストーカーか何か?」
だとしたら、ものすごく怖いぞ。
「アホ。お前だって知っているだろう?あのあたりは俺の近所だ。外に見たことある顔があれば、すぐにわかる。」
あぁ、そういえばそうだった。
こいつが住んでるマンションからは駅前が見えるんだ。
昔、駅が近くて良いな・・・とか、思ったこともあったっけ・・・。
「お前の家って、よく警察来ない?」
アレだけの立地条件なら、事件があったとき、よく見えるだろう・・・。
「話をそらすな。」
ばれましたか・・・。
「別に、浮気とかじゃねぇよ。頼まれたから付き合っただけで・・・。」
そもそも、誰に対しての浮気だというのだ。
大場さんとはあの誕生日の時以降まともに口を聞いていないし、サンマにいたっては彼女ですらない。
もちろん、それ以外に該当する女子がいるわけでもない。