夏と秋の間で・乙
二人目
その日、望巳は珍しくバイク通学をやめて徒歩通学をしていた。
たまにあるのだ。
バイクが走らせられない時期というのが・・・。
特に『給料日前』には。
「おはよう~。望巳くん」
曇り空の下、雨に備えて傘を振り回しながら家を出ると、聞きなれた声が後ろから聞こえた。
「おはよう、早月さん。」
顔を向けて返事を返す。
家を出てから2,3分の距離。
自分たちが住むところが近いせいか、近所の目が気になったが、早月さんは自分の隣で歩調を合わせて歩き始める。
「バイクどうしたの?歩きなんて珍しいね?」
・・・・・そっちこそ・・・・・・・・。
「バイクのガソリン代も馬鹿にならないものでね。この時期は極力バイク通学は避けているんだよ。」
とりあえず、隠してもしょうがないので正直に話す。
「なるほど。金欠というわけだね?・・・望巳くんらしい。」
口にしながら、早月さんは、フフフとかわいらしい笑みを浮かべた。
「どういう意味。それ?」
「あ、別に可愛いと思っただけだよ。気に障った?」
笑いながら、自分の顔を覗き込む早月さん。
その顔は本当に愛らしく、ソレこそが、彼女の人気の秘訣なんだろうと実感する。
「別に・・・。」
もちろん、そんなもの自分には通用しないが・・・。