夏と秋の間で・乙
秋刀魚
それから一週間の後、例年より少し長い梅雨が明けて夏が訪れた。
半袖を着ていても、流れ出る汗は止まらず、バイク通学の望巳にしてみれば、ヘルメットサウナを毎日味あわなくてはならないような、地獄の日々が続いた。
「あ~あ、ノーヘルはさすがにまずいよなぁ~。」
そんな日の放課後。
いつもの喫煙所。
そこでたむろする、悪がき二人組。
サンマと望巳である。
「いくら暑くてもそれはダメでしょ?見つかったら、タダじゃすまないよ。」
「まったくだ。タダでさえ、学校からは無許可なわけだしな。」
「よくやるよ・・・。」
サンマはタバコをくわえながら、紫煙と共に呆れた声を上げる。
ソレを見ていて、望巳の頭の中に、ある提案が思いつく。
果たして口にして良いものか、どうか・・・。
・・・・・・・・『もし、私が好きな人が望巳だと言ったら、どうする?』・・・。
まぁ、悩むだけ無駄というものか・・・。
「あのさ・・・あと一週間で期末テストだろう?」
7月の二週目から一週間賭けて行う期末テスト。
いまや、学校の授業ではテスト前モード一色だ。
「うん・・・。そうだけど、何?もしかしてまた勉強教えて欲しいとか?」
確かに、こいつには昔勉強を見てもらった経験がある。
あの頃は自分とサンマの成績の差が歴然だったから仕方なかったが、今は違う。
「誰が、お前なんぞに?」
「望巳、私より頭悪いじゃん?」
「昔はだろう?」
「今だって、私の方が成績良いわよ。」
まぁ確かにそうだけど・・・。