タレントアビリティ
「遅くなりました」
『そえにしては早かったんじゃない? 多分明日の昼には見つかるかなーって勝手に予想してたけど、さすがにそれは低く見すぎだったかしら?』
「あー、あながちそのくらい掛かるハメになったかもしれませんね。見つけた要素も勘というか、どっちかと言えばたまたま、ですから」
『かといったってそえが見つけたんだよー? それは、誇っちゃっていいんじゃない? んで? 今どこにいるのかしら?』
「家の前ですが」

 能恵が息を飲むのが分かった。どこに走馬がいるなんて分からなかったのだろうけど、まさか自分の家だとは思わなかったのだろうか。
 それとも何かまずい事でもあるのだろうか。自宅の前に走馬がいて、能恵にとって不都合な事。

『……なんでそーいうところで見つかっちゃうかなー。それは私も予想外だったわね、うん。いやね、まあ大方今まで行った事のあるような懐かしい場所にかなって踏んでたりしたけど、懐かしい場所がそえの家、か。これはまたまたもう、うーん、完全に……』
「何かあるんですか?」
『うんにゃ。でも私としてはねぇ、そえに出し抜かれた感じあるなーって、ちょっとジェラシー』
「はい?」
『あなたが羨ましいなってことよ。ほら、私はついつい理論的になっちゃうから、勘で行動したそえとか、完璧に勘で行動したそーま君とか、さ』
「よく分かりませんけど……。で、俺はどうすればいいんでしょうか」
『そこいて? すぐ行く』
「……万は?」
『バイト代払ったからお役御免。アイデア代になるかなー。もういいや、よろず君はさ。じゃあ後は私の仕上げ? いや違うか、そえが、仕上げるんだよ』
「ここにいればいいんですね、とにかく」

 様子に何も変化の無い走馬を見ながら添は言う。どのくらい時間を稼げばいいのだろうか。
 正直な話、走馬相手だとなかなかきついものがある。こんな掴めない人との会話はこっちが振り回されるだけであって、いくら才能に諦めを覚えている添とはいえどなるべく断りたい。

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