タレントアビリティ
「……ふふっ」
「は?」
「あはっ、あっはははははははっ! あんたすごいわそえ! にゃはっ、もーね、信じられない逸材かもよあんたは! 私をここまでさせといて、それでも曲げないだなんて! にゃーっ! もーなによー!」

 壊れたように能恵が笑い出したのは、その直後だった。恐怖感も冷たさも消えてしまった。
 添が知ってる純白能恵に、間違いなく戻った。

「あの、あた、さ……」
「信じられない! フツーの人ならぜっっったいビビっててっかーい! なのにさーっ! あんた凄いわ! そえ、もーね、むちゃくちゃすぎよ! あーお腹痛い! ひーっ!」
「……大丈夫、ですか」
「だいじょーぶよだいじょーぶ! そえがね、あまりにも本気っぽかったから、どこまで本気か試したかったのなー、みたいなさーっ! だからでもね、そえはよく貫いたかなって」

 携帯電話を取り出しながら能恵は軽く笑う。ひらひらと手を振ってそれから笑って、添の頭を軽く叩いた。
 もうどこまでも彼女は元に戻っていて、あの今まで見ていた能恵は何だったのだろうかとそこまで錯覚させられるような。

「あたえ、さん?」
「でもちょっと待っててねー。いくらなんでも私1人だけじゃー無理だからー、1つ連絡取らなきゃなのよね。後でそれに関してはね、うん、ちゃんと知らせますから、じゃ、さっさと探しに行きなさいよ。でも」

 添の制服の胸元を掴んできつい目をぶつける。不意に蘇った先程の恐怖感を思い出して、だから思わず、息を忘れる。

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