タレントアビリティ
「私に言ったこと、忘れたわけでは無いでしょうね」
「……はい」
「じゃ、よろしく~」
携帯に耳を当てる能恵を尻目に、添はマウンテンバイクに跨がる。しばらく夜風を浴びながらペダルを踏んで、とりあえずいくつかの候補地に行こうとして。
能恵の雰囲気が消えた瞬間に、添は理性を取り戻した。自分が何をやったのかを、思い出した。
ガシャン、とマウンテンバイクを倒す。そのまま膝を折り、フェンスにもたれ、粗い呼吸で夜空を仰いだ。
「ぜっ……、は……っ、あれは……、なんだよぉ……!」
怖かった。怖かった。あんな能恵を、見たことは無かった。あんなに恐怖するなんて、思いもしなかった。怖かった。
あの白い存在が怖い。隣で笑っていたような人だなんて思えない。笑顔でいてくれるような人だと、そんな才能がある人だとばかり思っていた。
「……あれは、別人、だ」
そうでも言わなきゃやってられない。あんな恐ろしいものを、知らないほうがよかった。知っているだけの能恵だけでよかった。
あれが能恵の本性ならば、それは恐すぎる。もう見たくない。人間だとは、思えなかった。
「探さなきゃ、走馬を」
倒したマウンテンバイクに跨がってもう一度ペダルを踏み込む。行く先は1つだけ、決めていた場所だった。
「……はい」
「じゃ、よろしく~」
携帯に耳を当てる能恵を尻目に、添はマウンテンバイクに跨がる。しばらく夜風を浴びながらペダルを踏んで、とりあえずいくつかの候補地に行こうとして。
能恵の雰囲気が消えた瞬間に、添は理性を取り戻した。自分が何をやったのかを、思い出した。
ガシャン、とマウンテンバイクを倒す。そのまま膝を折り、フェンスにもたれ、粗い呼吸で夜空を仰いだ。
「ぜっ……、は……っ、あれは……、なんだよぉ……!」
怖かった。怖かった。あんな能恵を、見たことは無かった。あんなに恐怖するなんて、思いもしなかった。怖かった。
あの白い存在が怖い。隣で笑っていたような人だなんて思えない。笑顔でいてくれるような人だと、そんな才能がある人だとばかり思っていた。
「……あれは、別人、だ」
そうでも言わなきゃやってられない。あんな恐ろしいものを、知らないほうがよかった。知っているだけの能恵だけでよかった。
あれが能恵の本性ならば、それは恐すぎる。もう見たくない。人間だとは、思えなかった。
「探さなきゃ、走馬を」
倒したマウンテンバイクに跨がってもう一度ペダルを踏み込む。行く先は1つだけ、決めていた場所だった。