タレントアビリティ
「あ、あたあたあた能恵さんっ!?」
「おっはよ、そえー。うん、もうちょい時間があったからついつい風音ちゃんを探しに来たんだけど、案の定の雰囲気だったからついでにそえを探しに来た」
「えぇ?」
「なんかさぁ、かわいいけど折れそうって感じだよね風音ちゃんって。あれは相当ナイーブだろーなー。しかも目の下腫れてたし、ありゃ昨日は寝れてないね、うーん」
「……そこまで見てたか」
「初対面とはいえど、そーいうのはきっちりチェックしておくものだよそえ」

 両手を組んで胸を張る能恵。添は通学かばんをアスファルトに置いて、髪を掻きながら能恵に言った。

「んじゃ、学校行きたいんで」
「えーつれないなーそえー。なによーもうちょい付き合いなさいよー」
「能恵さん、仕事は?」
「めんどいのよ。だいたい中東のお偉いさんって面倒だからいちいち砂漠まで行くのがかったるいのよ」
「砂漠? 中東?」
「ドバイ。じゃーそーいうことだからー。あ、私しばらく戻らないからよろしくぅ!」

 それだけ言ってさっさと走って行ってしまう能恵。後に残された添が感じたものは、周りからの奇異な視線としばらく1人になれる喜びと寂しさだった。
 そしてふと振り返れば、またまたトラブルの種が1つ。金髪を流して、彼女は言う。

「私の噂ですか……?」
「あ、おはよ、風音さん……」

 乗り切るのが面倒なイベントが立て続け。添のある意味不要な才能。それはトラブルメーカーであることなのだ。
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