タレントアビリティ
エレベーターに入りながら添は溜め息を漏らした。能恵の友人であり大手出版社の社長であるだけで十分なのに、能恵からあだ名で呼ばれている。
添が聞くのは2人目だった。確か「ことちゃん」と呼ばれる、能恵が信頼するプロフェッショナル。いつか会えるのだろうか、会わされるのだろうか。
「いやいや、そんなことない。かなちゃんはただの社長さんで作家さんだよ?」
「ただの、って……」
「そえだってなろうと思えば、社長さんくらいなれるよ? 作家さんにだってなれるし、私にだってなれる」
「それはちょっと言い過ぎじゃないですか?」
「私はそうは思わないけどなー。人の夢と才能は無限大っ!」
「そーですか」
「ちなみにかなちゃんも、同人作家だったんだよ? 私が何人か見つけてた人達の中で、1人だけ狂ってたから」
チン、とエレベーターが止まる。扉が開くと目の前にあったのは、いかにも社長室ですと言わんばかりの木の扉があって、プレートにはやっぱり「社長室」とあった。
プレッシャーというか何か重苦しいものを感じる。添は無意識のうちに足を一歩引いていた。ここに能恵と並ぶような人がいる。能恵に「狂ってた」と言わせるようなクリエイターが、いる。
「おっじゃまー!」
能恵が躊躇う事なく開けた扉の向こうには、赤がいた。
添が聞くのは2人目だった。確か「ことちゃん」と呼ばれる、能恵が信頼するプロフェッショナル。いつか会えるのだろうか、会わされるのだろうか。
「いやいや、そんなことない。かなちゃんはただの社長さんで作家さんだよ?」
「ただの、って……」
「そえだってなろうと思えば、社長さんくらいなれるよ? 作家さんにだってなれるし、私にだってなれる」
「それはちょっと言い過ぎじゃないですか?」
「私はそうは思わないけどなー。人の夢と才能は無限大っ!」
「そーですか」
「ちなみにかなちゃんも、同人作家だったんだよ? 私が何人か見つけてた人達の中で、1人だけ狂ってたから」
チン、とエレベーターが止まる。扉が開くと目の前にあったのは、いかにも社長室ですと言わんばかりの木の扉があって、プレートにはやっぱり「社長室」とあった。
プレッシャーというか何か重苦しいものを感じる。添は無意識のうちに足を一歩引いていた。ここに能恵と並ぶような人がいる。能恵に「狂ってた」と言わせるようなクリエイターが、いる。
「おっじゃまー!」
能恵が躊躇う事なく開けた扉の向こうには、赤がいた。