タレントアビリティ
「……来たか、あっちゃん」
「ニャハハ、久しぶりじゃんかなちゃーん。なに? まーたそんな不満そうな顔しちゃってー」
「生れつきだ。いちいち指摘しないでくれないかい?」
「顔付きは第一印象左右するから、無理にでも笑いなよっていっつも言ってるでしょ?」

 社長室のテーブルに座っていたのは、赤いショートカットに赤い背広を来た、不機嫌そうな女性だった。
 年齢は能恵より少し上、だろうか。少なくとも身長はかなり高く、添よりも上だろう。赤い背広が派手過ぎる。

「……相変わらずだなあっちゃん。ミルクティーでいいだろう? 後ろの君もそれでいいな。手間はかけたくないから、意見は無いからな」
「あ、はい……」
「しかし君があっちゃんのお墨付きかい? どこからどう見てもただの高校生じゃないか。あっちゃんの事だから何かあるのだろうが、少なからず僕のお目がねとは言い難いな」

 備え付けの冷蔵庫からペットボトルの紅茶を取り出しながらグサグサと突き刺す僕っ娘、要。言葉の破壊力が半端じゃない。
 既にノックアウト寸前のまま能恵の隣に座る。いづらい雰囲気以外感じられなかった。

「もーかなちゃーん。そんな初対面の人に毒吐かないの」
「あっちゃんに言われたくはないな。君も大変だろう? あーっと、そえ、君だっけ? 電話あっちゃんから名前は聞くよ」
「……結構辛いです」

 あなたに比べればたいしたことないです、という言葉は飲み込んだ。言ったらきっと能恵相手以上に酷い目に合うのは目に見えている。絶対無理だ。
 ペットボトルの紅茶を豪華なティーカップに注いで2人の前に置いた要は、そのままどっかりとソファに座った。黒いソファに赤い背広は目に毒だ。色合いがキツすぎる。隣の能恵は黒いソファに白いワンピースだが。
< 183 / 235 >

この作品をシェア

pagetop