タレントアビリティ
「君が彼と会話出来るかどうか。それに、あっちゃんが言うほどの逸材かどうか、ちょっと僕に見せ付けてほしいんだ」
「え?」
「何度も言わせるな。この紙に僕が要求することを書いてほしいと言っている。こう見えても僕も物書きであって編集者であるから、君の感覚を見ておく事は一応の通過儀礼だと考えて貰いたいんだよ。程度によっては門前払いとさせていただくよ」
「かなちゃんはいつからそんなお偉いさんになっちゃったのかしらね? 根無し草時代はもっと純粋に楽しんでたと思うけど」
「こうでもしなきゃ赤羽のメンバーのトップには立てないんだ。もちろん僕は今でも楽しんでいるさ。それぞれの作風を引き立てたり、ウインドノベルの装丁したり、充実はしているよ」
「かなちゃんの作品は?」
「僕は同人としてやっていくほうが性に合っているからね。サークルのみんなには度々迷惑をかけてはいるけれど、いい人達さ。さて、そえ君」

 白い紙と鉛筆を指差して要はうっすらと笑った。添の隣にいる能恵にも同じ笑みを向けて立ち上がる。ソファからやや距離を置いて、言った。

「テーマは『自分自身』だ。その紙に思い描く君をぶつけてくれれば構わない。どんな方法でもいい。そうだな、10分で頼むよ」
「10分、ですか……」
「長すぎるかい? なら5分でもいい。とにかく、10分以内に仕上げて持って来てくれ。僕とあっちゃんは外にいるよ。いいだろう? あっちゃん」
「まだそれやってたの? 教えたのは私だけど、かなちゃんに鑑定眼はあるのかなー」
「あっちゃんとは違うフィーリングで鑑定しているさ。たいていが不合格で、合格すればその6割は雇っているけれどね」
「残りは?」
「反りが合わない。僕の性格は、生憎人を寄せ付けるようなタイプじゃないからな。では、そえ君、よろしく頼むよ」
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