タレントアビリティ
「辛っ!」

 昼休みに屋上で食べる能恵特製カレーパンは、非常に辛いものだった。牛乳があって助かったなと、添はストローをくわえながら思う。

「大変だった、畜生……」

 全くその通りだった。朝、しかも校門の前でホワイトヘアーの少女(周りから見ればそう見える)と話していた事が人を引き付ける原因ではあった。
 そしてその直後に、あろうことか風音にビンタ。「あなたはいったい何なんですか!」の一言を添えて。
 しかもビンタを張った拍律風音は、地毛が金髪プロポーション上玉の、いわゆる学校のマドンナ的存在。周りから見れば、添はいわゆるこう見えるのだ。

「ホワイトヘアーガールとの浮気現場を、風音さんに見られたということか……」

 おかげさまで午前中を耐えるのが大変だった。言われも無い罪への視線に串刺しにされ、女子にはやたらとなじられた。初めて話をした人の人数が、今日だけでプラス20人ほど。
 そして昼休みになった瞬間、逃げるように屋上へダッシュ。かじったナンは辛かった。

「サボるか、午後」

 どうせ副教科とホームルームだ。いないほうが今日はいい。さっさと放課後を迎えて、静かな自宅でごろごろしよう。そう思ってとりあえず寝転がった時だった。

「うわ、やっぱりいた……」

 あからさまに嫌悪するような声が、遠くの入口から聞こえてきた。バイオリンケースを抱えた風音が立っている。
 添は寝転がったままで風音を見ていた。スカートの切れ目から覗けるか覗けないかの際どいライン。風音が近寄れば、見える。

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