タレントアビリティ
「不思議な人でしたね」
「にゃにが?」
「赤羽の社長さん。さすがは能恵さんの知り合い、って感じでした」

 その夜、要に紹介された京料理の店で、添は能恵にそう言った。漬物と白米を満足そうに頬張る能恵は、飲み込んで頷く。

「かなちゃんとはね、コミケで知り合ったの。ああいう同人誌にはサークルの連絡先があるから、即効で連絡してアポ取った」
「物凄い行動力……」
「かなちゃんのサークルは大きくて、彼女はそこでは落ちこぼれ作家だった。作風が過激でねー、なかなか売れなかったみたい」
「どんなジャンルだったんですか? よかったら読みたいんですが」
「アブノーマル」

 宇治茶の湯呑みを傾けて能恵が言った。ほとんど無くなった眼前の皿を虚しそうに見て、そしてメニューを手にとる。ご飯と漬物を頼んで、それから続けた。
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