タレントアビリティ
『マネキンをいただいては着色して、この部屋に溜め込んでいます』
「これどうするんですか?」
『使う時があれば使いますし、使われなければそれでいいでしょう』
「……コミュニケーションの一環だったり、しますか」
『心の現れですね』
長い髪が生えた女のマネキンの首を持ち上げ、ボロボロの頬に口付けしながら明洲がスケッチブックを見せた。首の海を歩き、1番奥の冷蔵庫を開く。
添はその物体を直視出来なかった。まさかそんなものまで再現していようだなんて、到底思わなかったわけで。
「……何よ、それ」
『もちろん本物ではありません。タイトルは「知識」でしょうね、きっと』
「なにもかも作るのね、あなたは」
『創る事が全てですから。この作品はK大学の医学部さんに依頼されて作りまして、絶賛されましたよ』
「でしょうね……。こんな作りになってるのか……」
その作品を冷蔵庫に収納して、それから首の部屋を出ていく。吐き気に苛まれているような添を能恵は引っ張り、廊下に出した。
顔は青白くなっているだろうと、自分で分かる。能恵がポケットから飴を取り出しながら、心配そうに尋ねた。
「大丈夫?」
「ちょっときつい、かもです……」
「我慢しなさい。あなたの好きなクリエイターの世界よ、これが。ややかなちゃんの影響を受けたりするのは仕方ないんだから」
「でもあれは……。まあ、はい、頑張ります」
飴を口にしながら添は言う。正直口に何も入れたくなかったものの、しかし能恵の飴は甘い味がした。
それからさっさと歩く明洲を追い掛ける。次の扉を開けた先には、絵が何枚もあった。
『一部だけですが』
「綺麗な絵……」
「さっきとは別物じゃんこれ」
先程の生々しさとは打って変わって、壁に飾られている絵はどれもこれも自然の絵だった。山、川、空、大地と、統一性は無いものの美しい。
どれも一級品の仕上がりで、先程の作品を掻き消してくれる錯覚さえ覚えた。
『暇つぶしで描いたもので』
「にしてはかなりの出来だけど、公開したりしないの?」
『まあ、はい。実際全てが暇つぶし・八つ当たりです』
「八つ当たり?」
「これどうするんですか?」
『使う時があれば使いますし、使われなければそれでいいでしょう』
「……コミュニケーションの一環だったり、しますか」
『心の現れですね』
長い髪が生えた女のマネキンの首を持ち上げ、ボロボロの頬に口付けしながら明洲がスケッチブックを見せた。首の海を歩き、1番奥の冷蔵庫を開く。
添はその物体を直視出来なかった。まさかそんなものまで再現していようだなんて、到底思わなかったわけで。
「……何よ、それ」
『もちろん本物ではありません。タイトルは「知識」でしょうね、きっと』
「なにもかも作るのね、あなたは」
『創る事が全てですから。この作品はK大学の医学部さんに依頼されて作りまして、絶賛されましたよ』
「でしょうね……。こんな作りになってるのか……」
その作品を冷蔵庫に収納して、それから首の部屋を出ていく。吐き気に苛まれているような添を能恵は引っ張り、廊下に出した。
顔は青白くなっているだろうと、自分で分かる。能恵がポケットから飴を取り出しながら、心配そうに尋ねた。
「大丈夫?」
「ちょっときつい、かもです……」
「我慢しなさい。あなたの好きなクリエイターの世界よ、これが。ややかなちゃんの影響を受けたりするのは仕方ないんだから」
「でもあれは……。まあ、はい、頑張ります」
飴を口にしながら添は言う。正直口に何も入れたくなかったものの、しかし能恵の飴は甘い味がした。
それからさっさと歩く明洲を追い掛ける。次の扉を開けた先には、絵が何枚もあった。
『一部だけですが』
「綺麗な絵……」
「さっきとは別物じゃんこれ」
先程の生々しさとは打って変わって、壁に飾られている絵はどれもこれも自然の絵だった。山、川、空、大地と、統一性は無いものの美しい。
どれも一級品の仕上がりで、先程の作品を掻き消してくれる錯覚さえ覚えた。
『暇つぶしで描いたもので』
「にしてはかなりの出来だけど、公開したりしないの?」
『まあ、はい。実際全てが暇つぶし・八つ当たりです』
「八つ当たり?」