タレントアビリティ
「かなちゃんはねぇ……。うーんっと……、なんでかにゃーっ、とにゃー」
「分からないんですか」
「分かんないわよ? 私が今までくでんぐでん言ってたのはあくまでも一般論で、だからこそ赤羽出版とかなちゃんは当て嵌まらない。私の後押しがあったからかもだけどね、きっとかなちゃんはあの空間で、そえの何かに気付いたんだと思うなー」
「……何があると」
「ニャハハ、そえはそろそろ認めちゃいなよー。私だけじゃなくてかなちゃんも認めてるし、気付いてるからねぇ」
「能恵さんが何か入れ知恵したんでしょうが……」
「何もしてないよん」

 カフェラテを一気に飲んで、それから空になったパックを潰してからさらりと言った。
 それから黙って本を開く。一度読み始めたらもう引き戻す事は出来ないし、そうしてはならないと添も分かっている。半端なところで話を切られた。

「何もですか」
「うん」
「……ならいいです。能恵さんも要さんも、的外れって事です」
「そえがはずれー」

 仕方ないから本を開く。能恵はとっくに本の世界に戻ってしまったから、もうこれ以上は会話は成り立たない。
 しばらくしてしまえば会話はいらなくなる。添と能恵の間の協定とは、そういうものなのだ。
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