タレントアビリティ
 確かにそれは言えるものの、しかし先例が少な過ぎる。風音の件といい走馬の件といい万は関わってはいたものの、それは能恵に振り回されただけ。
 万も能恵に目を付けられた存在ではある。お気に入りの添と似て非なる存在であり、しかし添とは違って自体に割と積極的に関わろうとする。
 だから巻き込まれたというよりは、自分から突っ込んだという表現のほうが正しいわけなのだ。それを添の責任にされては、どこか腑に落ちない。

「授業始まるぞ」
「へいへい。相変わらずごまかすねぇ空白君はよぉ……」
「ごまかすって……。気になるなら能恵さんにでも聞けよ、仕事中だけど」
「知らん」

 机の上のウインドノベルを掴んで自分の席に戻る万に、添はため息を1つ。どうしてこうも勘が強いのだろうか。
 チャイムが鳴って先生が教室に入る。次の授業は眠くなる世界史だから寝るよりは読書でもしようかと、膝の上で本を開いたそんな時。
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