タレントアビリティ
お帰りなさいと答えてくれる人がいない事は、実は結構寂しかったりする。誰もいないと分かっている自宅の鍵穴に鍵を挿す時にも、寂しさを覚えたり。
「ただいま」
返事は無い。もやもやした心を抱えながら、添は畳の上に転がった。頭の中を反響する風音の歌声が、木目の天井に響く。
ふと顔を横に向けると、冷蔵庫の壁に見慣れないメモが貼ってある事に気付いた。重い身体を何と無く動かしてメモを手に取る。能恵の字だった。
おかえり、添
私はドバイに旅立ちました
いつ帰って来れるか分からないけど、お金はあるからきちんと食べてください
080-○○××ー×○○
21時頃に電話してみて。楽しいよー
「……いつになるんだろ」
ちょっと寂しい。自分の日常を流れる水が、乾いた心を潤す水が枯れてしまったような気持ち。
いつから能恵がそんな存在になったのかを添は知らない。いつの間にかここに居着いて、日常を引っ掻き回して、そして添に才能を知らしめて。でもそれは、嫌いじゃない感情かもしれない。
それでもやっぱり、自分には才能が無い。それは変わらない真実でしかないのだ。
「さて、どーすっかな……」
というわけでしばらく手持ち無沙汰。あの電話番号に覚えはないが、きっと能恵のいたずらだろう。電話したら妙なコールセンターに繋がるというオチ。
しかし添は、きっと自分はそこに電話するんだなという確信があった。寂しいし、暇。
「誰か来ないか……」
こんこん、と。
都合の良いタイミングで、ドアがノックされる音。時刻は6時を過ぎた頃。気付けば学校から帰って、もう1時間くらいは経過していたというのか。
「ただいま」
返事は無い。もやもやした心を抱えながら、添は畳の上に転がった。頭の中を反響する風音の歌声が、木目の天井に響く。
ふと顔を横に向けると、冷蔵庫の壁に見慣れないメモが貼ってある事に気付いた。重い身体を何と無く動かしてメモを手に取る。能恵の字だった。
おかえり、添
私はドバイに旅立ちました
いつ帰って来れるか分からないけど、お金はあるからきちんと食べてください
080-○○××ー×○○
21時頃に電話してみて。楽しいよー
「……いつになるんだろ」
ちょっと寂しい。自分の日常を流れる水が、乾いた心を潤す水が枯れてしまったような気持ち。
いつから能恵がそんな存在になったのかを添は知らない。いつの間にかここに居着いて、日常を引っ掻き回して、そして添に才能を知らしめて。でもそれは、嫌いじゃない感情かもしれない。
それでもやっぱり、自分には才能が無い。それは変わらない真実でしかないのだ。
「さて、どーすっかな……」
というわけでしばらく手持ち無沙汰。あの電話番号に覚えはないが、きっと能恵のいたずらだろう。電話したら妙なコールセンターに繋がるというオチ。
しかし添は、きっと自分はそこに電話するんだなという確信があった。寂しいし、暇。
「誰か来ないか……」
こんこん、と。
都合の良いタイミングで、ドアがノックされる音。時刻は6時を過ぎた頃。気付けば学校から帰って、もう1時間くらいは経過していたというのか。