タレントアビリティ
「はいはい、今開けますよーっと」
「よ、むーなしろっ」
「……厄介な奴が来た」

 扉を開けると、万が立っていた。
 寿岳 万。ことだけ よろず。

 一応クラスメート。一応、というのは万が、いわゆるクラスで浮いているからであって、余り深い関係を持つ人が添のクラスにあまりいないからである。
 しかし何故か添と万の間にはそれなりの交遊があった。万が浮いているとしたら、添はクラスで沈んでいる。我を出さない地味な存在と、我を出すからこそ浮いてしまう派手な存在。
 対極にあるからだろうか。気付けば2人は惹かれあっていた。

「何の用だよ、万」
「んあ? 能恵さんいないって聞いたからさ、タダ飯でもたかろうかよって話だな」
「……生憎あんまりいいのは無いんだけど」
「昨日の作り置きくらいあるんじゃねーのか? ほら、さっさと上げろっての」

 ずいずいと迫る万に溜め息を漏らしながら、添はとりあえず家に上げた。相変わらず狙ったかのように訪れる万。おかげさま能恵がいない時に、暇をすることはあまりない。

「ああ、マジにいないんだな能恵さん。ん、ナイス直感」
「……お前は毎度毎度、俺の暇な時を潰してくれるね」
「るせぇ。細かい事はいいから、晩飯頼むぜ」
「はいはい」

 昨日のカレーを温めながら、添は適当な返事をした。部屋に広がるスパイスの香りに万がニヤリと喜ぶが、無視。
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