タレントアビリティ
「なあ、空白」
「ん?」
「お前さ、歌姫と面識あるわけ?」
「面識っつーか、うーん……。名前お互いに知ってます、ってくらいか」
「へぇ、すげえじゃん」
「どこが?」
「いやだって歌姫って、もう面白い位に他人とぱったりだから。そーいうのお前と似てるけど」
「うるせぇ、晩飯抜くぞ?」
「カンベン。いやでも、歌姫とのアプローチ確保しているのは珍しいんだぜ?」

  畳に大の字になってから言う万。詳しい意味がよく分からないが、その無駄にイケメンルックにカレーでもかければいいんだろうか。
 皿にカレーとパンを適当に乗せてから、添は万の正面に座った。いただきますとも言わずにがっつく万に尋ねる。

「確かにそうかもだけど、たまたまじゃないのか?」
「いや、どうだろね。空白、お前だからじゃないのか?」
「……俺だから?」
「おうよ。歌姫はなんとなく孤独で、自分の歌にも自信が無いって聞いてんだけど、お前はこう、そういうのに頓着しないだろうなって歌姫が想像したんじゃね?」
「それは、どうだろ……」
「お前は何と無く、人を寄せ付けないのに人を引き寄せるし」
「……わけ分からん。それにお前だってそうだろうがよ、万。嫌われてる癖に引き付けるのが、俺が思うお前の才能だろうけど」
「ハハッ、よく分かってるじゃねーか」

 パンをちぎりながら万が笑う。しかし話を無理矢理ずらすかのように、そしてもう一度口を開いた。わざわざ接頭語をつけて。
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