タレントアビリティ
「ゲームしようぜ。ぷよぷよ」

 そんな万の提案を飲んでから2時間。万をコテンパンにしたところで、電話をかけてみる事にした。

「かけるぞ……、ってお前、何やってんだ?」
「コンピューターとトレーニング。ったく、お前強すぎ」
「まあ、能恵さんとしょっちゅうやってるから……。なあ万、電話の詳細どうすんの?」
「後でかみ砕いて説明しろって。なあ、連鎖組めないんだけど」
「コツ掴め、コツを」

 適当に返してから添は部屋を出た。ゲームの音と万の叫びが電話に入るのは、やっぱり嫌だ。やや冷たい廊下の壁にもたれ、番号をプッシュする。
 しばらくのコール音の後に聞こえて来た声に、卒倒しそうになったのだけれど。

『だれ、ですか……?』

 どうしようもなく、それは確かに風音のものだった。

「あ、っと……」
『あの、知らない番号、みたいなので、すみません、切りますね』

 プチッ。ツーッ、ツーッ、ツーッ、ツーッ……。

「能恵さん……。俺に何をさせるつもり?」

 溜め息をもらしてリビングに戻ると、しかし万もまたがっくりと肩を落としていた。テレビ画面を見ると、ゲームオーバーの文字が。

「負けたのか……」
「ソッコーで。……って、お前、電話終わったんか?」
「まあね。ってかすげえ人に繋がったんだけど」
「ん? 能恵さんとか?」
「能恵さんの番号を知らないわけないでしょ」
「そりゃそうか。じゃあ、今話題に上がってる歌姫の番号か」
「…………」

 さすがだった。万はかなり感が強いわけで、しかし何故かぷよぷよは弱い。それでも人の心の微妙な変化を読み取って、ニヤニヤするのが趣味であるような。
 沈黙した添を肯定とみて、そんなニヤニヤを浮かべる万。ゲーム機の電源を切って笑った。
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