タレントアビリティ
「アハハハハッ……! あなたたち、何か勘違いしてるんじゃないかしら? あのねぇ、刺激しようがするまいが、あなたたちの身柄は私の元にあるのよ? 気に喰わなかったら撃つから、指」
「……指を撃つくらいなら、殺して下さいよ」
「んー?」
「私の生きる意味を、奪わないで下さいよ」
風音がその指で冷たい銃を握り、ゆっくりと床へ向けさせた。能恵は驚いたようにそれを見る。
風音の手はおかしいくらいに震えていた。唇も指も両膝もがたがた震え、それでも言葉を紡いでいく。
「私にとって……、音楽は全て。結局お父様と比べられて、いやがおうでもお父様の影を纏って行きねばならなかったんですよ、私は。私の奏でているはずの音楽は、いつでも、拍律響の娘の音楽だったんです」
「……だろうねぇ」
「私はそれが、たまらなく嫌でした。誰も私の音楽を聴いてくれない。誰も私の音楽を、聴いてくれない。私はお父様の音楽を、再生するだけの機械でしかなかった……」
冷たい銃から手を離し、ゆっくりと膝を折る。足元に置いていたバイオリンケースを開いて、その中身を構える。
能恵の頬が緩む。添の呼吸が止まる。そこに立つ拍律風音は、拍律風音としての拍律風音にしか見えない。
ガムテープでずさんに修理された、ボロボロのバイオリン。添が屋上から投げ捨てたバイオリンそのものだった。
「私の音楽。私の伝えたい音。歌姫でも何でもない、拍律風音個人としての音楽……。それを私は、奏でたいんですよ!」
背中をのけ反らせて大きく息を吸い、ボロボロのバイオリンで奏でる最初のフレーズ。
「……指を撃つくらいなら、殺して下さいよ」
「んー?」
「私の生きる意味を、奪わないで下さいよ」
風音がその指で冷たい銃を握り、ゆっくりと床へ向けさせた。能恵は驚いたようにそれを見る。
風音の手はおかしいくらいに震えていた。唇も指も両膝もがたがた震え、それでも言葉を紡いでいく。
「私にとって……、音楽は全て。結局お父様と比べられて、いやがおうでもお父様の影を纏って行きねばならなかったんですよ、私は。私の奏でているはずの音楽は、いつでも、拍律響の娘の音楽だったんです」
「……だろうねぇ」
「私はそれが、たまらなく嫌でした。誰も私の音楽を聴いてくれない。誰も私の音楽を、聴いてくれない。私はお父様の音楽を、再生するだけの機械でしかなかった……」
冷たい銃から手を離し、ゆっくりと膝を折る。足元に置いていたバイオリンケースを開いて、その中身を構える。
能恵の頬が緩む。添の呼吸が止まる。そこに立つ拍律風音は、拍律風音としての拍律風音にしか見えない。
ガムテープでずさんに修理された、ボロボロのバイオリン。添が屋上から投げ捨てたバイオリンそのものだった。
「私の音楽。私の伝えたい音。歌姫でも何でもない、拍律風音個人としての音楽……。それを私は、奏でたいんですよ!」
背中をのけ反らせて大きく息を吸い、ボロボロのバイオリンで奏でる最初のフレーズ。