タレントアビリティ
「まあ、そうだよ。ってどうしたの?」
「うぐううううっ! うぎゃあああっ!!」
「あ、それはきついわよね。そえ、返しなさい」
「……あだりばえでず」

 辛いしネバネバしているクレープ。能恵はそれを平気で食べながら、話せなくなった添に代わって聞いた。

「生活費が無い?」
「そうなんだ。ボク、こう見えて一人暮らしだからさ、生活費って困窮しやすいんだよね」
「どこに住んでるわけ?」
「すぐそこのアパート」
「そっか……。学校は?」
「めんどくさいからあんまり行ってないよ」

 走馬も能恵の前に積まれているクレープの1つを頂戴して食べる。「ブルーベリーチーズクレープ」は、やや大人の味だった。
 能恵は手に持つクレープを口に入れて咀嚼しながら考える。そして飲み込んで、1つの提案を投げかけた。

「バイト」
「やだ」

 速攻で却下された。
 さすがの能恵もちょっと苛立ったのか、ややきつい目つきで走馬を睨む。声色も変わっていた。
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