Rain
『知香…俺、ほんまごめん。何も知らずに傷つけててんな。ごめんな…ずっとそばにおるから』




聖夜はそう言って後ろからあたしを抱きしめた。




『いいって…帰ってや…何も知らんかったらあの子んとこ戻ってたんやろ?もういいから…』



口ではそう言いながらも、あたしは抱きしめられた手をほどくことができなかった。



悔しいけど、背中に感じる温かさがあたしの気持ちをまた惑わせた。







あたしは曲がったことがキライ。

浮気や遊びなんてありえへんって思ってた。


人は人を好きになるなら、一人だけを愛するのが当たり前だと思ってたし、自分もそうであり相手もそうでいてほしいと思って…た。







あたしが好きになった聖夜。

あの子が好きになった聖夜。

聖夜が好きになったあたし。

聖夜が好きになったあの子。




まるで…
運命の続きだった。





お父さんとお母さんとあの子の母親みたいな…。



じゃあ捨てられるのはあたし?






そんなことを考えていても、あたしは聖夜に抱きしめられながら思ってた。





あたしは…


絶対聖夜を“渡さない”と…。
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