Rain
『あ…』


そこに立っていたのは、香織だった。


『香織!お前…聞いてたんか』


気付いたお父さんとおばさんがそう声をかけた。



聞いてたのかな…

香織は黙ったまま、あたしから目をそらした。



前よりかなり痩せていて見ていて痛々しい。






あたしは何も言わず、そのまますれ違い歩きだした。



『あのっ…』

その時すぐに後ろから香織に呼び止められた。


あたしは黙って振り返った。




『げ…元気な赤ちゃん産んでな。聖夜におめでとうって言っといて。あいつのこと…お願いね。あと…色々ごめん』


香織はそう言うとすぐに仮眠室に入ってしまった。




声には覇気もなかった。


弱い女の子だった。


あたしが知ってた気の強いあの子じゃ…なくなっていた。
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