Rain
病室の窓の外は、

雨が…降っていた。







『なぁ、赤ちゃん…大丈夫やんな?』


あたしは聖夜の手を強く握った。


『…』


な…に黙ってんの?




『なぁ、なんとか言ってよ!!あたし何でナプキン付けられてんの!?なぁ…』

『知香…看護婦さんがな、階段から落ちた時の衝撃で流産したって…。倒れてた時に血が流れててんて…』



何かが壊れていく音が聞こえた。



『う…そや……嘘や!嘘や嘘や嘘や!!』

『知香!落ち着け!』

『嘘や…なんでよ…ぉ…なんで…あたしの大事な…なんでよ…』







雨が降っていた。

ザーザー降りしきる雨の音が…

窓の外から聞こえてた。





またいなくなった。


あたしの大事な人が…







泣いても泣いても涙は止まらなかった。


あんなに泣いたのは、お母さんが死んだ時以来だった。




あたしはもう壊れてた。


もう…疲れた。
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