Rain
『ありが……ぅ…っ』


お父さんは声にならない声でまた泣いた。





あたしはその時思った…

あたしはこの人の子供なんだな──と。




さっきお父さんが泣いてたら悲しい気持ちになった。


病室に来た時には親子らしい会話しながらお父さんが笑ってくれたら嬉しかった。




あたしはやっぱりお父さんのこと、お父さんって思ってた…。






愛されたかった時、お父さんはいなくなった。


一人になった時、お父さんは黙ってあたしを見てた。



寂しい時も手を差し伸べてくれることはなかった…。






でもあたしは心の中で待ってたんだ…

愛されることを。


だから泣いてるお父さんを見てられなかった。



笑ってほしかった。



だってあたしの…お父さんやもん。






『じゃあまた明日ね』


あたしは泣いているお父さんを見ないようにしてそっと仮眠室から出た。
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