朝陽のもっと向こう側
夏希「いつもの~」

あゆむ「すごい・・・」

夏希「え?」

夏希さんは注文に来た店員さんにそう言った。
その台詞は僕の中でも一度は言ってみたい台詞の一つである。

あゆむ「ここ、よく来るんですか?」

夏希「うん、学生時代からちょくちょくね。 ほら、そこ」

そう言って夏希さんが指差した先には、何枚かの色紙が飾られていた。
夏希さんに連れられてきたこの店は『ルクポワ-ル』。

あゆむ「綾瀬信に、霧島飛翔・・・霧島明日美、桜井塔矢、小泉真琴・・・門崎祐司・・・?」

他にもいろいろな人の名前が書かれている。

夏希「馴染みの店ってわけ」

そう言って夏希さんはコップに入ったビールを一気に飲んだ。

夏希「会ったことない人もいるけどね」

あゆむ「夏希さんってすごい人だったんですね・・・」

夏希「そうでもないよ。 たぶん君が思っているよりも、この人たち、普通だよ?」

あゆむ「え?」

夏希「泣いたり怒ったり笑ったり。 君や私たちと何も変わらない、ただの人間だからさ」

あゆむ「・・・」

夏希「そういえば帰り際に、屋上で美緒に会ったんだって?」

あゆむ「え、どうしてそれを・・・」

夏希「あの娘が話したのよ。 あんまり自分のこと話さないのにね」

メグと同じこと言っている。
そんなに感情に乏しい娘には見えなかったんだけどな。

僕に気付くまでは楽しそうに歌っていたし、
学校の話も普通にしていたし。
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