朝陽のもっと向こう側
今まで考えたこともなかった。

普通でいることが当り前の僕は今まで、
「特別」っていうのに憧れ・・・いや、門崎祐司や小泉真智たちのことを考えると、
「特別」っていうより「嫉妬」か。
とにかくそんな気持ちがあった。

僕にとって病院の環境は特別で、美緒にとってはそれが日常で。
僕にとって今の暮らしが普通で、美緒にとってはそれが非日常で。

その後戻ってきたメグと一緒に病院を出た。
さっき、美緒に言われたことを、僕はずっとずっと考えていた。

夕陽が沈み、星の夜になる。
そんな静かな一瞬。
この何気ない一瞬でさえ、美緒にとっては大切なものなのかもしれない。

だから、美緒は・・・

美緒「綺麗だけど、私は好きになれないな・・・」

あんなことを言ったのかもしれない。

毎日病院の中で繰り返されることが日常になってしまい、
僕らのような外で生活しないと感じられない「常に変化する世界」が羨ましくなる。

美緒の痛みや苦しみは、何も病気だけに留まらないのではないか。
この生活さえもつらいものなのだろう。

あゆむ「メグ、今日は・・・」

病院の帰り道、僕はメグに話しかけた。

メグ「あの娘があんなこと言うなんて、私も思わなかったわ・・・」

メグがため息混じりにそう言った。

あゆむ「やっぱり・・・楓さんと話していたことって・・・」
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