朝陽のもっと向こう側
明日香「え? あれ? そっちこそどうしてこの時間にここにいるの?」

明日香さんと話している途中で、向こう側から歩いてきた男性が明日香さんに声をかけてきた。

??「病院の帰りだよ。 真智に診てもらってきた」

明日香「真智ちゃんに? 仕事は休みだったっけ?」

??「あぁ。 今日忙しいのは綾瀬さんくらいだな」

明日香「そっかぁ。 夏希ちゃんも苦労するよね。 それより休みなら、連絡くれれば私も一緒に行ったのに」

??「別に調子が悪かったわけじゃないよ。 もう来なくてもいいって呆れられたくらいだ」

明日香「そう? なら、これから真智ちゃんと一緒に出かけるけど、一緒に来る?」

??「いや、今日は帰るよ。 また今度な」

明日香「そっか。 じゃあ夜に電話するね?」

??「あぁ」

完全に2人の世界に入っていた。
彼は最後にそう言って僕らの横を通り過ぎていった。

僕のことに気付かなかった?

いや・・・まるで僕のことが最初から視界に入っていないように、
彼は僕の横を通り過ぎていった。

あゆむ「今の人・・・門崎祐司ですか?」

明日香「あ、ごめんね・・・」

あゆむ「いえ、別に構いませんけど」

明日香「そういえばあゆむ君、今日も美緒ちゃんのところに行くんでしょ?」

あゆむ「え・・・? 行っていいんですか・・・?」

どういうことだ?
夏希さんや明日香さんたちには昨日の屋上でのことが伝わっていないのだろうか。

明日香「行っていいよ? 夏希ちゃんや楓ちゃんからもお願いされていたでしょ?」

明日香さんは不思議そうに首をかしげて言った。

あゆむ「は、はい。 そうですけど・・・」

明日香「それじゃあお願いね? 私もそろそろ行かなきゃ。 またね」

明日香さんは手をふりながら、遠ざかっていった。
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