モラトリアム
思い出すのも嫌で、
アタシは走った。


京子には情けなさすぎて
言えなかった。


「先輩とは何もなかったよ。でもなんかもう、冷めた」

とだけ、
翌日伝えた。


あまりにあっさりとアタシの中で片付いたからか、

涙は出なかった。


ただ、

無駄に空いた3つのピアスの穴だけが、

やたらとスースーしているような気がした。
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