モラトリアム
「ううん。いらない。なんだか、これ買って、なんて言えないし、買ってもらわなくても、いいんだぁ」


京子はそう言って、
少しだけ、下を向いた。

恥ずかしいのか、
頬がほんのり赤くなっている。


「そっか……まぁ、デート、楽しんできなよ」


アタシはそれ以上、
何も言えなくて、
トレーを片付けた。
< 38 / 99 >

この作品をシェア

pagetop