モラトリアム
「何で立ってるの?」


下を向いたまま、
アタシは尋ねた。

この人にこの質問をする日が来るなんて、

思いもしなかった。

「彼女をね、待ってるんだ」


彼は、
少しだけ苦笑いをして頭を掻いた。

「彼女?え?だっていっつも立ってるよね?彼女来ないじゃん」


言った後で、

あ。しまった

と思った。
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