モラトリアム
「いっつも?え?いっつも見てたの?」


「ち・違う!違うけど、アタシ、昨日アンタと目が合ったよ?」


うん。
我ながら嘘が下手だ。


顔が赤くなっているのが分かる。
「昨日?」

「うん。昨日」


手袋を外して、
両手で火照った頬を冷やす。

どうしよう。
“あぁ、あの男の子と歩いてた!”とか、

“いつも渋谷に座ってる!”とか言われたら。

なんかいつも暇みたいじゃない?

ていうか、どうしてアタシが動揺しないといけないのよ。
< 88 / 99 >

この作品をシェア

pagetop