金星に帰る


いつだったか、アカネは言っていた。

その日は、俺が珍しく泊まった夜だった。


柄にもなく、床に転がって、アカネと二人で毛布にくるまったまま窓から明るい夜空を見て他愛も内話しをする。

関係を持ち始めてまだ間もない頃で、その時俺は、アカネの別れ際の態度の理由を聞いた。



「だってな、嫌やんか。

次いつ逢えんのかもわからんのに、見送ったりするの。

そんで、また来てねなんて言うたら、シュウちゃんのこと待っとかなあかんし」


「それって、やっぱこういう関係は嫌ってこと?」


「違う」


アカネはきっぱりと言って、その黒くて丸い目を明るい夜空に向ける。


その大きな瞳には月が映り込んでいるだろうかと、俺は横顔を見ながらなんとなく思った。





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