金星に帰る
月を見上げたまま、アカネはぽつりと言った。
「あんなぁ、シュウちゃんとこうやって逢えるのは奇跡で特別なことで
……ホンマは別れるの嫌や。
ずっと一緒にいたい。
だけどワガママ言うたらあかんの。
人間、何でも思い通りにはならんから。
だからアタシはシュウちゃんは金星におると思うてる」
びっくりして、思わず吹き出した。
「何それ?」
聞いたら、アカネの黒くて丸い目が俺の方を向いた。
今度は間違いなく、俺の顔を映す。