曖昧-aimai-
冬が近づくある日。

「〜♪ッケホ・・・〜♪」

歌っているユキさんが
苦しそうな咳をした。

「ユキさん?!」

ユキさんは歌うのを
中断して咳をし始めた。

「ゲホゲホッ・・・・
大丈夫だか・・・ゲホッ・・・」

でも体を支え切れず
その場に崩れてしまった。
急いで額に手をあてると

「あつっ・・・」

ひどい熱があった。

それなのに。
こんなに寒い中。
ずっと歌っていたの??

私は何も考えずに
タクシーを呼んだ。

「ユキさん!!立てる?!
うちきて!!暖めなきゃ!!」
するとユキさんは私の手をとって

「大丈夫・・・だから。」

と言った。

「ばかっ!!!こんなに熱あるのに
大丈夫なわけないでしょ?!
黙ってうちに来なさいっ!!!!」

今まで出したことのないくらいの
声で言った。

「れえ・・・」

タクシーがきて私はユキさんを
乗せた。

「何?!」

ユキさんははぁはぁと
苦しそうな呼吸の後に
(ごめん)と擦れた声で言った。

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