my name
リビングのドアを開けると、そこで夕飯を食べているのはパパとママだけだった。
「あ、ご飯食べる?」
「うん…」
あたしが来たことに真っ先に気付いたのはママだった。
あたしにそう聞くと食べるのを中断してキッチンに向かった。
「またアレか?」
パパが心配そうな顔で聞いてくる。
「うん…」
「そうか。相手は亮佑君か?やっぱり初めにきちんと言っておいた方が良かったかもな」
「でも亮佑君怒鳴るような子には見えなかったからねぇ」
キッチンからママが会話に加わる。
「あたしがいけないんだよ」
可愛いなんて言われただけで動揺したから。
「怒らせるようなことしたのか?」
「ん、ちょっとね」
「気をつけなきゃダメでしょー。それであんな状態になるの自分なんだからー」
「はい…」
二人とも気を使ってか、こういう時はあたしの名前を呼ばない。
あの状態になった時はいつもそう。
そうだ。そういえば赤木君がいない……。