my name
「で、何」
赤木君がベッドに座ったから、あたしは床に座ってベッドに背中を付けた。
顔を見て話す勇気はなかったから。
だから体育座りしている自分の膝を見て話し始めた。
「あたし小さい頃のトラウマがあってね」
「……。」
「自分の名前を強い口調で呼ばれるとあーなるの」
赤木君はあたしの話をただ黙って聞いていた。
「だから普通に呼ばれても少しだけ嫌な感じがする」
あたしのことを「空」と呼んでいる赤木君への嫌味じゃなくて。
ちゃんと知ってほしかった。
「小さい頃にね、やなことがあってそのせいらしい。
あたしもあんまり覚えてないんだけど、その時に名前を強く呼ばれたみたいなんだ」
嫌な記憶だったから消しちゃったのかな。
何があったのかは覚えていない。
「それがトラウマになっちゃって、特に同い年くらいの男の子が一番ダメ。
それが原因で男の子とは仲良くなれないんだよね……。
だから赤木君は悪くないよ」