春夏秋冬
加絵の今にも食いつきそうな表情を見ていられなくなって、あたしはペコッと彼に頭を下げた。
「いえいえ、では…」
少し黒い髪にクセのある彼は、定食を持って立ち去ってしまった。
あんな若くて親切な男の人ってこの会社にいたっけ?
名前くらい聞いとけば良かったかな…。
それからは昼食を済ませて、何とか1時に広場に集まる事が出来た。
「では、今日から勤めてもらう新入りを紹介します」
泉さんは赤い眼鏡を少しずらしてそう言った。
その言葉に入って来た新入りの姿に、皆はザワッと一斉に黄色い声が飛び出した。
あたしも見た瞬間口をポカンと開けてしまった。
だって……この人、食堂の時の!
「上原達也と言います。今日から皆さんに迷惑かけないように頑張りますのでどうぞよろしくお願いします」
案の定、"上原達也"は食堂の時に席を替わってくれた若い男の人だった。