kasiraな私

涙が引っ込んだ訳

「お父さ~~ん!!いやぁーー。置いて行かないで・・・あたしを1人にしないでぇ~」


三枝に連れられた病院。


案内された場所は・・・霊安室。


線香の匂いが鼻を突きじっとりした空間にあたしのお父さんは横になってた。


顔には白い正方形の布が被せられてた。


こんな場面、ドラマや漫画でしかまだ見た事無かったよあたし。


「・・・お嬢」


三枝は私の肩を優しく包んでくれた。


「なんでぇ?どうぢてぇ?ひっく」


いきなり・・・どうして?お父さんは死んじゃったの??


あたしは動かないお父さんを必死で揺さぶった。


揺さぶり過ぎて・・・


ぱさっ


お父さんの腕がだらーんと下に伸びた。


お父さんの手を握るとまだぬくもりが残ってた。


「温かい。お父さん温かいよ?三枝!」


振り向いて三枝を見ると切ない表情であたしを見てた。


座り込んでるあたしに合わせてじゃがみこんで、


「・・・・・・」


何も言わずにそっとあたしの涙を親指で拭った。


「うっ・・・ひっく。1人はやだよ・・・やだよ」


「お嬢は1人ではありません。大丈夫です」


三枝はあたしを抱き締めて背中をポンポン叩いた。


「・・・兄貴!ちんちくりん相手に何やってんだよ?」


ちんちくりん?



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