kasiraな私
箱の中には食パンと牛乳。


雨に濡れてパンなんか柔らかくなってたぜ。


俺は犬が可哀想に思って差してた傘を箱の上に置き、走って事務所まで向かった。


まさか、この時の女が後藤組の組長の娘だと思ってもみなくて・・・


事務所に着くと兄貴からタオルを借りて滴る雫を拭いてたら、組長室から何やら揉めてる声が聞こえたんだ。


「お父さん~。いいでしょ?」


「だ~め。何度言ったらわかんだ?」


そんな会話を事務所で聞いてた俺。


「兄貴。これ何だ?」


俺は組長室を指差して兄貴に聞いた。


「・・・お嬢が、ペットを飼いたいって騒いでるんだよ。子犬を見つけたって」


「子犬??」


まさかな。


「頭は犬が苦手だから・・・今回はお嬢に諦めてもらうしかないかなぁ・・・」


がちゃっ


組長室のドアが開き、


「ねね!お願い!」


「だ~め。しつこいぞ!藍」


組長の腕を掴んで必死に頼んでる女・・・


「あっ・・・」


やっぱりあの傘差し女だった。


俺に目もくれず組長と本宅へ続く廊下を進んでいく傘差し女。
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