kasiraな私
月寄り


「本日は当代が先(せん)に亡くなられたため、代理人、若頭の三枝充で取り扱います」


新年一発目の幹部会を極道では『月寄り』と言うらしい。


あたしはお母さんが着るはずだった着物に袖を通し、事務所の大広間に正座をして座ってる。


三枝に「組長になってあげてもいいよ?」って言ったら安心した様な顔であたしを見つめてた。


「頭のためにもお嬢を守りますから!」って力強く言ってくれた。


そんな三枝に安心して、襲名式に参加したあたしだけど・・・


口が開きぱなし。


あたしと三枝は程好い距離を空けて並んで座ってるんだけど。


あたしと三枝から見えるように後藤組の幹部が座ってて・・・


物凄く怖い。


そして・・・あの龍も。


あたしが襲名した後で、あたしはこいつと盃を交わす。


親と子の関係になる。


「お手前の盃・・・跡目に対する気持ちの分だけ残してやって下さい」


三枝に向かって、盃に酒を注ぐ媒酌人。


「・・・・・・」


三枝は無言で神酒を半分飲み干した。


媒酌人はあたしを見て、


「すでに十二分に覚悟をお持ちとは存じますが、改めて腹定まりましたら・・・この盃、一息に飲み干し、懐中深くお納め下さい」


と言い、盃をあたしの前まで持ってきた。


あたしは深呼吸をして盃に手を伸ばした。


後戻りは出来ない。


ここまで着たら何でかんでやるしかないんだ!


口元へ近づけると、お酒の匂いで鼻が曲がった。


匂いからしてアルコールがキツそうな酒。


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