ミッドナイト・ブルー
「全然愛美はなにか食べたのか」と、冷蔵庫に飲み物を取りに行く愛美に聞き返した。
「うん、ケンが起きてから作ろうと思っていたから」と、言いながら中からスパークリングウォーターを持って棚からグラスを持って来て、注いでくれた。
窓から外を見ると、かなりの勢いで雪が降って来ている。
「ケン、寝ている間に、病院と店長と潤子に電話して置いたんだ。二、三日後に、戻りますって」
「判った、今日はここに居て、明日温泉に行こう、それで良いかな、それとも何か有る」
「うん、それで良いよ。そのかわり、ちゃんと治療に専念してね」
「約束は、・・・・・・」
「なに、聞こえないんだけど」
「だから、約束は出来・・・・・・・」
「なあに、約束は」
「だってさ、俺、痛いのと辛いの嫌いだから」
「だから約束はなんなの」
「判った、約束するよ」
「それじゃぁ、ケン運転できる」
「大丈夫だけど、なに」
「材料が無いから、買い出しに行きたいんだけど」
「へい、合点だじゃ愛美電源のコードを、外してくるから、そこの調理器具仕舞って」
「はい」と、言う事で買い出しに出掛けた。
3時間後、クルマはキャンプ場に戻っている。
クルマの中では、コーヒーを飲みながら、ケーキを食べていた。
窓から見える景色は、真っ白になっていた。
「愛美、結構積もり出したな。明日の朝には、クルマが動かせなくなっていたりするんじゃないかな。」
「凄いね、なんだかスキー場に来たみたい」
その後、愛美の作ってくれた夕飯後ウヰスキーを飲んでいる時、
「なあ、まなみ頼みが有るんだけど」
「なぁに」
「タバコが吸いたいんだけど駄目かな」
「駄目に、決まってるでしょ、と言って突き放すのも簡単だし、先生に言われているのも有るけど、あれだけ、好きで吸っていたのに、急にゼロはきついよね。だからあの次の日から、私はバックの中に、軽いけどメンソールなら気にならないかなって思って、入れて置いたんだ。その替わり減らしてね。そうねぇ、二日で一箱にして」
「判ったそうする」と、バックからタバコと、ライターを携帯の灰皿と、一緒に出してくれた。
パックを開け一本取り出すと口にくわえジッポーのライターで、火を点け吸い込むと、暫く吐き出さず薄くなった煙を吐き出した。
< 53 / 87 >

この作品をシェア

pagetop