ミッドナイト・ブルー
「俺か、俺は、約束で疲れたり痛かったりした時は、隠さずに言うと決めてあるからそんなの気にし無くて良いよ」
「それなら、安心して行くよ」と、言うのを聞きながら趣味の部屋に入ると窓を少し開けバソコンの電源を入れてメールを、チェックし始めた。 みんなから、退院おめでとうのメールが届いていた。しばらく、読んでいたが、少し疲れが出たので、外を眺めながらポケットから出したタバコを、くわえ火を付けて煙りを吸い込んだ。
しばらく、ぼーっとしていた。ドアを叩く音で我に戻りタバコを消した時、愛美が、コーヒーの入ったマグカップが二つと手作りクッキーが、乗ったトレーを持って入って来た。
トレーを灰皿の乗っている小さいスタンドテーブルの上に置き
「ケン、何してるのコーヒー持って来たよ」と、棚に綺麗にポリッシュして飾って有る、ソレックスの三連キャブレターとインテークマニホールドのシルバーに輝くボディーなにげに、見た時心の中で『終わったな、とうとう飾り物に、成っちゃったな』と、呟きを漏らしていた。
「ケン、どうしたの」と、言われて、愛美が何か話し掛けていた事に気が付いた、俺は咄嗟に、
「なに、どうした」と、答えていた。その顔が小さな悪戯っ子が、絶対にバレナイと思っていたのに、あっさりとばれてしまった時の様にオドオドしていたようだ。
それを、見た愛美がニコニコしながら、
「なに考えていたの、何か悪戯でも思い付いたの」
「イャ、そんな事無いけど、コーヒーかちょうど喉が渇いていたんだ」と、カップを取ると口に運んだ。
窓の外を眺めながら、コーヒーを飲んでいると、後で話し掛けていた愛美が、テーブルに手を着いている俺の、腕を潜る様に俺の前に来たかと思うと、俺の胸に寄り掛かりくっついて来た。
愛美は、退院してから一時も離れようとしない。
なにか有ったらと考えているのか一日中離れる事は無い。あまり離れないから、潤子が焼き餅を焼く位である。
「またくっついてるよ、私の居る前で、そんなにあんちゃんとベタベタしなくても、まるで新婚の夫婦だよ、愛美水かけるよ」と、愛美に怒る  「あんまりくっついて居るとあんちゃん疲れちゃうかもしれないよ」と、脅かすと笑っている。  3時間後、タクシーを呼び三人で少し早いけど、先程買った酒をぶら下げて店長の家に向かった。
チャイムを鳴らすと、中から、
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