ミッドナイト・ブルー
「何だか判らないけど、ケンの物を片付けるたびに、もうケンは居ないんだと、身に染みて来るしもう絶対に会う事も、話す事も、増してや触れ合う事も出来ないって実感してしまうのよ、未だ忘れられないよ」
「それは、そうよ私だって無理だよ忘れるなんてでも、少しずつ自分の身体の中にしまって行くことが出来るんだって人間は」
「そうかなぁ、今でもケンの事を考えていると、苦しくって、やり切れなくって、お腹を切り裂かれて粗塩を内蔵に素手で擦り込まれるような気持ちになるの」
「わかるけど、悲しくて悔しいのに何処にもぶつける事が出来ない感じでしょ」
「そうなの、苦しいねもうこんな思いしたくないって感じ」等二人で、思いを吐き出し合いながら何とか乗り切ろうとしていた。
それから半月後、突然電話がかかって来た。
「すみません、カープロデュースの専門店クロエと言います。旦那様ご在宅ですか」
「主人は、先日他界しましたが何か」
「えっ、さようでございましたか、お力落としの事と、思いますが本日お電話差し上げたのは、旦那様の方から三ヶ月前に、お電話で車のオーダーを戴きまして、本日納車する事になりましたのでその、お知らせの為のお電話ですが何時頃にお届けすれば宜しいでしょうか」と、言った内容であった、何がどうなっているのか分からず戸惑っていたがとりあえず午後に持って来る事になった。

その日の、午後3時位に再び電話が鳴った。
マンションの駐車場にクルマを停めたので見に来て欲しいとの事で、潤子と二人で駐車場に行くと
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