ミッドナイト・ブルー
一台のクルマの横に、紅白のツナギを着た上にモス・グリーンのウィンドブレーカーにショプの名前の入った物を、羽織った男女が、立っていた。
近ずくと、男が歩みだし笑顔で手を差し出して来た。「プロショップ・クロエのオーナーの黒江 博と言います。こちらはメカニックの、今井和恵です」
「よろしくお願いします」
握手をかわすと、オーナーの黒江が説明をはじめた。
三ヶ月程前に、新車を乗りつけ、隅々迄手を入れたいが、金額、時間、等どの位かかるのか等聞かれた後実際にオーダーを出されクルマを預けて行かれ、つい先日迄よく見に来られていたんですが、やっと出来上がったのでお届けに、来た次第です」
「そうでしたか、何も聞かされておりませんでしたが判りました」
「ご主人さまは、全てのお支払いを済ませておりますので本日はクルマのお引き渡しで完了となります」と、今井和恵は言うとクルマの鍵を愛美に渡した。
そのクルマのボディーカラーは、ケンの好きだった色のミッドナイトブルーだった。
今井がこのクルマの事を話し出した。
「え〜 先ず説明させて頂きます。このボディーカラーですが、この色にかなりこだわっていらっしゃいました。ご主人がおっしゃるには『ミッドナイトブルーメタリック』と、なかなかこの色を出せずに苦労しました。ボデーから足回りインテリア・ライトに至まで手が入る全ての部分に考えられるチューニングをしました。勿論エンジンもです。全て乗り易さの為にですが、こんなに豪華なクルマを私達初めて作らせていただきました
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