Virus
夕「ダーリン……」


夕花さんが、心配そうに兄さんの事を呼んだ。


さっきの戦闘でも兄さんはまだ、俺を守ってくれた。

……本当に…


困った兄だよ……。


淳「兄…さん……」


遊「なんだよ……?」


淳「ほら、皆が待ってる……から…。早く行きなよ……」


遊「ふざけんなっ!お前を置いていけるはずが――」

淳「でも、みみさんは置いて行ったでしょ…?」


遊「! それは……」


淳「だから……。俺も、ここに残らなきゃいけ…ないんだよ…」


苦痛に顔を歪める兄さん。

そう……


こんな優しい兄さんが居たから俺は、ここまでこれたんだ…。


淳「早く……あの化物が戻ってきちゃ――……」


ドカァン!


俺が、そう言い終わるのよりに先にすぐ隣の壁が崩れた。


流「! 危ない!」


真横に居たのは今までの化物より大きく、醜い化物だった。


目から血が出ている……。

あぁ、きっとさっき裕大さんが撃った傷だな…。


目と触手を撃たれて化物は機嫌が悪そうだった。


“チャンス”……だな。


化物が俺等を丸飲みしようとしたのと、同時にポケットにあった手榴弾を奴の口目掛けて投げた。
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