Virus
かろうじて意識は保っていたようだった。


由「ゴメ…ン……ね……。」


淳「喋っちゃダメだ!とにかく、止血しちゃ―…」


由「わた…し…幸…せ…だっ…た…よ……。大…好き……。だ…から………あつ……し……は…幸…せ…に……なっ……て…………。今…まで」


最期の一言は声にすらなって居なかったが分かった。

―ありがとう……―


そう言って、眠るように由李は目を瞑った。


淳「由…李……?」


その時、救急車のサイレンが耳に響いてきた。


でも、淳志の中の時計はそこで止まった。


その後、由李は救急車で病院に搬送されたがほぼ即死近い状況だったので搬送された救急車の中で息を引き取った。


遊「淳志!」


事故の事を聞いて急いで来た遊志が霊安室に入った。


そこに居たのは、無表情で心が抜けてしまったような淳志と、元々白いがもっと白い…雪のような白さで霊安室に寝せられている由李だった。


遊「由…李…」


遊志は由李の頬を触った。

もう二度と動かない白い体は本物の雪のように冷たかった。


遊「淳志……」


その後、抜け殻のようになった淳志の肩に手をやった。


すると淳志は「兄…さん……」と言いながら兄の手に触れた。


淳「……俺の…せいだ………」


遊「えっ?」


淳「俺の…せいだ……。体の…調子が悪いの…知ってた…のに…あんな…寒い所で…待たせて……俺の……!っ……!」


淳志は涙を流した。


きっと、今までずっと我慢してたのだろう。


そんな弟の頭を遊志は撫でた。


遊「お前のせいじゃない…。由李は…お前に会えて幸せだったと思う…それは…外部で見ていた俺にだって…分かる」


そう言っても淳志の瞳からは絶え間なく涙が流れる。

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