Virus
淳「――だから、俺は前向きに生きようと思った。由李が、幸せになれって言ったし……兄さんもついててくれたから…」


淳志はギュッと胸を押さえた。


遊「だったら、なんでこんな事…」


淳「でも、聞いたんだ………。あの事故の真相の事を…」


遊「真相…?」


遊志はハッとした。

――――――――
そして、職員室から出た帰りに淳志はふと思い立って、教室に行った。


……今日だけ思い出に浸ろう。


明日からちゃんと生きるから……


今日だけは浸らせて……


そう思って教室に入ろうとした時、中から声がした。

「淳志の奴、今日も来なかったな」


(この声は…)


その声はあの時、由李の事を教えてくれた同じバスケ部の部員だった。


教室には他にも数人残っていたようで、声が聞こえてきた。


「まだ立ち直れねぇんだろ。まぁ、しゃーないさ…」

皆、心配してくれてる…。

やっぱり、前向きに生きなきゃダメだよな…。


俺は、そう思い教室のドアに手をかけた。


「皆ゴメン。心配かけて…でも、もう平気だよ」そう言おうと思って。


だが…次の瞬間、信じられない言葉が聞こえてきた。

「でもさ馬鹿だよな。たかが、恋人が死んだくらいでよ」


ドアにかけていた手をピタリと止めた。


「確かに〜。また新しい子、探せばいいじゃんね〜」

女子の声。


この声は、確か嫌な噂がある女子の声だ。


「よく言うぜ〜。中川いじめてたくせによ〜」


淳「えっ…?」


俺は、止まった。
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